貧民の子女が、社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案 [青空文庫のこわい話1]:空想ラビュリントス(仮)

貧民の子女が、社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案 [青空文庫のこわい話1]

 
 
→1729年、スウィフトによる貧困をいっきに解決する(美味しい)名案。
 
作品名: 「アイルランドにおける貧民の子女が、その両親ならびに国家にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案」 
著者名 : Jonathan Swift(ジョナサン・スウィフト) 翻訳者 : sogo
  
 この大きい街を歩いたり、田舎を旅行したりすると、目の前にはゆううつな光景が展開される。
通りを歩けば、街路や人家の入り口に女乞食が群がっている。
その女乞食の後に、三人、四人、六人と子供がついてきている。
みな襤褸《ぼろ》をまとい、道行く人に施しを乞うているのだ。

 我が王国において、厖大な量の子供が、乞食である母親(父親のときもある)の腕に抱かれたり、背中に背負われたり、後ろを歩いていたりしている。
子供たちは悲惨な状態にあって、非常に多くの問題をもたらしている。
 子供たちを社会にとって健全かつ有用な社会的財産にするための、公正で、安価で、簡単に実行できる方策を発見できる者がいるならば、その者は社会にとって望ましい人であるから、国家の保護者として銅像を設置するに値しよう。

 それゆえ私は、謹んで以下に私案を提出する。
おそらく諸君にはなんら異議はないものと存ずる。
 私はかつて、ロンドンで知り合った非常に物知りなアメリカ人から話を聞いたことがある。
彼曰く、よく世話された健康な赤ん坊は、丸一歳を迎えると、とてもおいしく、滋養のある食物になるそうだ。
シチューにしても、焼いてもあぶっても茹でてもいいとのことだった。
たぶんフリカシーやラグー[#注二]にしてもいけるだろうと思う。

 私は諸君に以下のことを考えていただこうと思っている。
すでに計算した子供十二万人のうち、二万人を繁殖用に残しておく。
男はその四分の一でよい。
それでも、羊や牛や豚よりも割がいい。
その理由は、こういった子供たちは結婚の結果生まれたものであることはまれだし、未開人の間では結婚なんてあまり尊重されないみたいであるから、それを考慮すれば、男一人で十分女四人に子供を生ませられるであろう、というものである。

 残りの十万人は、満一歳になったら、国中の貴族や富豪に売りつける。
母親に言い含めて、最後の一月にはたっぷりお乳を吸わせ、まるまると太らせて、どんな立派な献立にも出せるようにしておくことが肝要である。
 友人へのもてなしには子供一人で二皿分作ることができる。
もし家族だけで食べるなら、四分の一もあればリーズナブルな料理となろう。
塩か胡椒で少し味付けして、殺してから四日目に茹でればいい料理になるだろう。
冬には特に十分煮込む必要がある。

 より賢い利用法として(時代がそれを要求しているから書くことにしよう)、死体の皮を剥いでも良かろう。
その皮膚を精巧に仕上げれば、すばらしい婦人用手袋や、紳士用夏物ブーツとして利用できるだろう。
 ダブリンシティーにおいては、屠殺場がこの目的に使えるだろうし、もっと便利な場所として、保証付きの肉屋がすべての仕事をこなすだろう。
だが私は生きた赤ん坊を買ってくるのをお勧めする。
赤ん坊をナイフで切らずに豚の丸焼きみたいに焼くのだ。

 私は、我が良心に賭けて、私案に必要な仕事を遂行するにあたって、少しも個人的関心を持っていないことを誓う。
ただ我が王国における公共的な利益を得るため、商業を振興し、赤ん坊のための準備をして、貧民を困窮から救い出し、金持ちに若干の楽しみを与えようとしているだけである。
私には赤ん坊がおらず、従って一ペニーを得ることもない。
末っ子は九歳だし、妻はもう子供を産める年ではない。


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この記事へのコメント
通りすがりに覗いてみました

面白い話ですね
あのガリバー旅行記のスウィフトがこんな事を書いていたんですね、スウィフトにありそうといえばありそうですがカニバリズムはショッキングですねえ。でも淡々と語られているのが妙にユニーク。

色々考察も浮かびますが今日は気力不足でトラックバックできません。
でもここは面白い記事が多いのでまたきます、よろしくお願いします
Posted by ケンスウ at 2004年05月09日 03:52
ケンスウさん、いらっしゃいませ!

スウィフト私案を現代にあてはめると、増え過ぎた老人を畑の肥料に!てなところでしょうか。ナハナハ。
Posted by 迷宮の中のらびゅー at 2004年05月09日 22:34