2006年04月11日

シーンからの報告49

 
75.
食べ終えた肉皿のソースを舌でじかに舐めるような、人前ではこれまで控えていたそういう習慣一般を、私はこの村の暮らしの中で身につけていったのである。

夜の闇に隠れて近隣の村々へ出向き、高床式になった米倉に細工を施し、ネズミたちの味方をした。ネズミ返しのところに棒きれを括り付け、彼らが斜めに這い上がれるようにしたのだ。

ある日の真夜中、私は胡座をかき、たき火に顔を照らされるネズミたちと洞窟にいた。私の工作が彼らの利得となり、それがまた私の儲けとなった。

私はネズミ一匹がやっと通れる小さな穴をくぐり、地上までの距離をつかって人間の形と人間らしさを取り戻し、何食わぬ顔のまま床に入り眠った。
 

Posted by 迷宮の中のらびゅー│PermalinkComment(4)